第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する

 自分がマスター選手の隣に座り彼が指し手につれて自分の読みを明かすところを想像してみよう。そうすれば手筋に興奮し構想が生まれてくるのを目撃する喜びに浸ることができる。釘付け、ナイトによる両当たり、二重攻撃、詰み手筋などの戦術の主題(これらはそのような機会が目の前に現れれば必ず我々でも気づくことができる)が舞台を作り上げる戦略によってどのように準備されるのかが分かる。

 本章の試合は何といっても見事な戦闘を見せびらかすものでもなければ、激烈な(時には予測不可能な)攻撃を特集したものでもない。本章の試合は一般的な名局の部類には入らないかもしれないが、戦力による鉄の支配を用いてどのように局面を作り上げることができるのかを示している。そしてカパブランカが提唱し自分でも実践して成功を収めた次の三つの偉大な原則を適用することによって何が成し遂げられるのかを示している。

 1.序盤では迅速で効率的な展開

 2.中盤では駒の連係

 3.終盤では正確で能率的な指し方

 本章の試合は実戦におけるカパブランカの原則が有効であることの素晴らしい実例である。私の本ではこのような試合こそが名局である。