第3章 チェスのマスターが自分の読みを解説する(続き)
第25局
ヤノフスキー対アラピン戦は紛れもなくヤノフスキーの生涯の最高傑作である。素通しのd列での捌きでパスポーンができた。このポーンをせき止めなければならない黒はその役目を巧妙に強い駒から弱い駒に交替させていった。それからヤノフスキーのポーンが7段目の黒枡に届くところに来るという面白い局面が現出した。それは敵の首を何本もの指で絞めているようなものだった。そして結末は攻撃があちこちの列に対して面白く行なわれ黒の受けもそれに追随させられた。
クイーン翼ギャンビット拒否
白 ヤノフスキー
黒 アラピン
バルメン、1905年
1.d4
白はポーンを中原に進出させて指し始めた。このポーンは次のように色々な務めを果たしている。
このポーンは二つの駒を自由にしている。
このポーンは重要な地点を占めている。
このポーンはe5とc5の地点を支配して相手がそこに駒を置くのを妨害している。
このポーンは味方の駒がe5またはc5を橋頭堡として利用するのをしっかりと支援する用意をしている。
1…d5
黒も白にならってポーンを中原に据え白が次に 2.e4 と指すのを防いだ。
2.c4
白はポーンを差し出して黒が中原を放棄するよう誘った。
白の手は黒のdポーンに対する攻撃にもなっている。それによって白は黒ポーンとそれの中原の所有を根こぎにすることを望んでいる。
2…e6
これは中原にポーンを維持するためのいつもの仕掛けである。白が 3.cxd5 と指してきた場合には黒は別のポーンでdポーンを置き換える用意をしておかなければならない。駒で取り返すのは良くない。その駒は白のeポーンで追い払われ白が中原の地点を全部所有することになる。
例えば 2…Nf6 なら 3.cxd5 Nxd5 4.e4 Nf6 5.Nc3 で白が圧倒的に有利になる。
3.Nc3
これは受身の 3.Nf3 よりも積極的である。このナイトはd5にさらに当たりを加えe4の支配の争いにも手助けしている。
クイーンポーン布局の目標の一つは後でeポーン突きを達成することである。それはキングポーン布局で後から d4 と突いてさらに地歩を固めようとするのと同じことである。
3…Be7
ここでの通常の手は 3…Nf6 である。しかし黒は手順を変えてナイトが釘付けにされるのを防いだ。(それほどまで恐怖におののいている!)
4.Nf3
白は単純な展開で満足で、キング翼ナイトを最適な地点に置いた。
アリョーヒンならば黒の手順前後を咎め 3…Nf6 が防ぐ 4.e4 をすぐに指して力戦に引きずり込んだだろう。
4…Nf6
黒はいったんはこの素晴らしい手を指すのを延期したがここでは仕方なく指した。しかし他にどのようにしてキング翼を展開しキャッスリングの準備をすることができようか。
5.Bg5
これは本当の釘付けではないがその効果はいくらか似ている。圧力がナイトとその後ろのビショップと最後尾に位置するクイーンにかけられている。
5…h6
アラピンは釘付け、ないしは擬似釘付けに耐えられなかった。すぐにビショップを攻撃して方針を決めさせた。
6.Bh4
客観的にみてこの手が最強の手かどうかは重要でない。ビショップの圧力が黒を悩ませるという事実がヤノフスキーが釘付けを維持する十分な理由である。
6…dxc4
黒は自分の駒にもっと動く余地を与えるために局面を開放した。しかしこのポーン取りで中原での自分の地歩を放棄した。
7.e3
これはポーンを取り戻すための最も簡明な方法である。キング翼ビショップはポーンを取り返し、それが同時に展開の手となる。
7…a6
この手は 8.Bxc4 に対して 8…b5 と応じて白のビショップを当たりにし先手をとって自分のビショップを展開する準備である。
8.Bxc4
これで戦力は互角になったが将来の見通しは白の方が良い。白は黒よりも駒が2個余計に活動していて中原におけるポーンの形も優っている。
8…b5
このポーンによる攻撃の主目的はクイーン翼ビショップのためにb7の地点を空けることである。
9.Bb3
誰もまだこの手とd3のどちらがビショップの引き場所として適当かを決めかねている。b3ならばビショップは黒の中原を直撃しているが、d3の方が良いと考えている人たちはそこの方が急所のe4の地点を支配するのに役立ち黒キングがキャッスリングした際そこを狙っていることを理由にあげている。
9…Nbd7
もちろんこのナイトはcポーンの邪魔になるc6へは行かない。このポーンは白の中原を攻撃し黒のルークのためにc列を開けるという使命があるのでその遂行を妨げるようなことをしてはならない。
ナイトがd7へ展開するのは気が利かないように見える。しかしf6のナイトを補強し中原に向かって …c5 又は …e5 とポーンを突くのを支援する用意をしている。
10.Qe2
熟達した選手は決定的な行動を始める前に自分のすべての駒が働いているようにすることに注目して欲しい。この手はクイーンのように非常に強力な駒にしては大した手ではないように見える。しかし最下段から駒を離すという単純な行為でも展開の目標を推し進め進展を成している。
もう二つ要点がある。試合の初めの方の段階ではクイーンはc2やe2のように自陣に近い所にいるのが非常に適切である。もっと攻撃的な展開(一般的には離れポーンを拾い集めるために)は危険をみずから招く。最下段から離れることによりクイーンは(キングがキャッスリングした後)ルークが連結できるようにしている。
10…c6
黒がこの手で何をしようとしていたのかを正確に知ることは難しい。白の d5 突きを恐れていたのかもしれないし、ことによるとクイーン翼へのクイーンの出口を作りたかったのかもしれない。いずれにせよこの手はこれ以上猶予することなく中原を争う 10…c5 よりはっきり劣っている。
11.O-O
白のこのキャッスリングは攻勢の手段で、ルークを活動的な任務に急がせている。
11…O-O
黒のキャッスリングは防御が目的で、キングを安全な所に移した。
12.Rac1
ルークがc列の先端に来た。この列の支配はこの布局における白の主要な目標の一つである。
12…Bb7
クイーン翼ビショップが展開して黒はクイーンポーン布局の防御側を悩ます課題の一つを解決したかのように見える。しかし黒はまだ困難を脱していなかった。
13.Rfd1
これは素晴らしい手である。これで両ルークが絶好の地点に配置された。d列における圧力で黒が 13…c5 で捌きにでるのが危険になっている。14.dxc5 と応じられるとキング側ルークの筋が通る。
13…Rc8
黒はcポーンをさらに支援して、14…c5 と突きポーンを交換しようともくろんだ。そうなれば黒陣が捌けc列をめぐって戦うことができる。
14.Ne5!
これで白は理想的に展開し、どの駒もよく働いている。反対に黒は駒の動きが制限されて展開が妨げられている。
白のこのナイト跳ねは黒が 14…c5 で捌こうとするのを防いでいる。15.dxc5 Rxc5(15…Bxc5 は 16.Nxd7 で黒は取り返せない)16.Bxf6 Bxf6 17.Nxd7 で白がナイトを得し黒の二つのルークにも当たっている。
14…Nxe5
黒は駒交換ができるなら何でも交換して圧迫を和らげようとした。
15.dxe5
この交換は白に都合がよい。白は素通しになったd列で攻撃の機会がある。ポーンで取り返したことによる別の効果はd6に橋頭堡ができたことである。これにより白はこの地点に駒を据えて利用することを期待している。
15…Nd5
ナイトはクイーンに対するルークの当たりをさえぎらなければならない。代わりに 15…Nd7 は 16.Bxe7(d6の地点の守り駒を取り除くため)16…Qxe7 17.f4 となって、白はd6にルークを埋め込みルークを重ねるかナイトをe4を経由してそこまで捌くことになる。
16.Bxe7
d6の地点の弱点につけ込むためには黒枡に利いているこのビショップを取り除くことが必要である。
16…Nxc3
黒はc3のナイトが害を及ぼす前にそれをやっつけた。代わりに 16…Qxe7 と取るのは白にナイトをe4に運ばれてそこからd6またはc5に据えられる。
17.Rxc3
明らかに 17.Rxd8(または 17.Bxd8)はだめで、17…Nxe2+ 18.Kf1 Nxc1 で黒が勝つ。本譜の手はd列にルークを重ねる白の作戦で手得をする。
17…Qxe7
この取り返しの後戦力は互角であるが、陣形は白の方が少し良い。しかしマスターは勝ち切るのにどの程度の有利さが必要なのだろうか。
白の具体的な優位は唯一の完全素通し列を制圧していることと、戦略上重要なd6の地点にかけている圧力にある。
18.Rcd3!
この手は当然そうな 18.Rd6 よりもずっと強力である。18.Rd6 には 18…c5 と応じられ 19.Rcd3 とルークを重ねると 19…c4 と両取りにこられて黒の駒得になる。
本譜の白の手は手損することなくルークを重ね 19.Rd7 で駒得する手を狙っている。
18…Rfd8
このような状況で劣勢側がいつも直面するジレンマは次のようなものである。もし劣勢側が節目ごとに敵に抵抗せず全ての重要な列、斜筋、枡の支配をめぐって戦わなければゆっくりと追い詰められ壁に押しつぶされる。もし至る所で敵に対抗すればその結果起こる駒交換で局面が単純化するが形勢は好転しない。
本譜の局面で黒はルークをぶつけるのを遅らせることはほとんどできなかった。なぜなら黒は 19.Rd7 による7段目への侵入だけでなく 19.Qd2 でd列に大駒を三つ重ねる手を狙われていたからである。このような素通し列での兵力の集結にはもちろん抵抗が不可能である。
19.Rd6!
白はd6にしっかりと駒を据えて領有権を主張した。
19…Rxd6
こうしないと白は次に 20.Qd2 と指して黒陣に耐え難い圧力をかけてくる。
20.exd6
これで白にパスポーンができたが、このポーンは相手の生活の仕方に多大の影響を及ぼすことになる。ニムゾビッチは「パスポーンの突き進む欲望」に特別の注意を喚起し、それを「閉じ込めておくべき犯罪者」とみなさなければならないと言った。
パスポーンがこれ以上進むのを防ぐために黒はその通り道に駒を置いてせき止めなければならない。実際このポーンを監視するために黒は残っている4個の駒のうち1個の働きを失わなければならない。もしこのポーンをおとなしくさせておくために絶えず監視が必要ならば、黒は守りに忙殺されて反撃のことなど考えられないことは明らかである。しかし白は攻撃をある個所から別のところに自由に移すことができる。
20…Qd7
この手はほとんど必然である。このポーンはせき止めなければならずそれもすぐにである。このポーンがもう1枡進めば黒にとって致命的である。その可能性を目撃すると次のとおりである。20…Qd8 21.d7 Rc7 22.Qd2(23.Qd6 の後 24.Qxc7 からポーンを昇格させて勝つ狙い)22…c5 23.Qa5 Rxd7 24.Qxd8+ で白が勝つ。
本譜の黒の手でこのポーンは止まった。しかしせき止めるために黒は最強の駒のクイーンをそれに縛り付けることになった。
21.e4
この手は 22.e5 と指してdポーンを支えさらに黒陣を押さえつけるつもりであることを示した。そうなれば白の駒はdポーンを見守る必要性から解放され盤上を自由に動き回ることができる。
21…c5
黒はビショップの筋を開けルークにもっと自由を与えた。
22.e5 を防ごうとすると次のいずれかになったかもしれない。21…f6 22.Qg4 Kf7 23.e5 fxe5 24.Qf5+ Ke8 25.Bxe6 Qd8 26.Qf7#。あるいは 21…f6 22.Qg4 Re8 23.Bxe6+ Rxe6 24.Qxe6+! Qxe6 25.d7 で白の勝ち。
22.e5
この手はdポーンがその生涯の次の段階に行くのを支援する。
dポーンは最初は同僚とあまり変わらず、次はパスポーンになり、現在は保護パスポーンになった。そして最後は(その輝ける前途をまっとうすれば)クイーンになる。
22…c4
冷静に現実に立ち返ろう。黒はクイーン翼で相手を忙殺させる反撃策を開始するために一歩一歩着実に戦っている。
23.Bc2
ビショップは押し戻されたが面白い展望を抱いて新しい斜筋を見張っている。
23…Qc6
黒は最強の駒をパスポーンの監視の仕事に縛り付けておきたくなかった。そこで詰みの狙いで白の注意をそらした。白が詰みを防ぐ間黒はせき止め役を交代させる余裕ができる。
24.f3
黒のクイーンとビショップに無駄骨を折らせて長斜筋での攻撃を終わらせた。
24…Qc5+
このチェックの主要な目的は白が 25.Qe3 で黒枡の斜筋を支配するのを防ぐことである。
25.Kh1
白はクイーンを盤上に残した。明らかに白は 25.Qf2 でクイーン交換をさせるよりも直接攻撃で勝負に勝つことを望んでいる。
このような判断は何よりもまず棋風の問題である。勝ち方に複数の選択のある場合は自分の気性と適性に合った手段を選ぶべきである。現在の局面ではルビーンシュタインやカパブランカならためらわずにクイーン交換をさせて単純化を図ると想像される。彼らは複雑でない状況でのわずかな有利を勝ちに変える能力に自信を持っていて、鮮やかな攻撃での勝利は他のマスターたちにまかせている。多種多様で豊富な傑作の創造に感謝しなければならないのはこのような様々な技法によるものである。
25.Qf2 の後黒がクイーン交換を避けて 25…Qxe5 と指せば 26.d7 Rd8 27.Qb6(ルークとビショップの両当たり)27…Rxd7(27…Qb8 なら 28.Be4 で白の駒得)28.Qd8+! Rxd8 29.Rxd8# で白がきれいに勝つ。
25…Rd8
ルークがポーンを押さえ続ける役目を担った。
26.Qe1!
これは妙手である。このクイーンは 27.Qh4 を経由して黒のキング翼に侵入するか 27.Qa5 を経由して黒のクイーン翼に侵入する手を狙っている。
26…Rd7
当分の間パスポーンを動けなくした。
27.h3
いざという時のキングの脱出口を開けた。これはクイーンとルークが攻撃のために出払った際に1段目でキングが頓死を食わないようにしたものである。
27…Bc6
ルークが今の地点を離れビショップ(価値の劣る駒)が見張りに立てるようにまた駒の組み換えを行なう。
28.f4
29.f5 による敵陣突破を準備した。ポーンは攻撃の素晴らしい道具となる。ほとんどどんな要塞でも突入し駒が侵入できるような裂け目を作り出すことができる。
28…Ra7
ルークがd7の地点を空けてそこをビショップが占めるようにした。
29.f5!
この厳しいポーン突きに対して黒は 29…exf5 と応じられない。なぜなら 30.e6 fxe6(さもないと白の6段目の2個のポーンが連結パスポーンになる)31.Qxe6+ Kh8(31…Rf7 なら 32.d7 で白の勝ち)32.d7 で白の勝ちとなるからである。
29…Bd7
黒は守りの交替を終えた。駒の一つがせき止めを務めなければならないのでその役目を最も重要でないビショップに任せた。
30.f6
ポーンによる打ち壊しで防御陣に突破口が生じる。白の狙いは 31.Qg3(32.Qxg7# の狙い)31…g6 32.Bxg6 fxg6 33.Qxg6+ から2手詰めに討ち取ることである。
30…g6
30…gxf6 と取るのは 31.Qg3+ Kf8 32.Qf4 f5(32…Qxe5 は 33.Qxh6+ Kg8 34.Qh7+ Kf8 35.Qh8#)33.Qxh6+ Kg8 34.Qg5+ Kf8 35.Qf6 Kg8 36.h4 Qc8 37.h5 Qf8 38.h6 Kh7 39.Rd4(40.Rg4 から 41.Rg7+ の狙い)39…Qxh6+ 40.Rh4 でクイーンを釘付けにして白が勝つ。
本譜の手の後ポーンの形の変化は白に格好の攻撃目標を提供する。しかし白が用心しなければならないことは重要なeポーンを守ることである。このポーンは二つの深く進攻したポーンをしっかりと支えている。注意すべきはこの二つのポーンの位置が黒枡のc7、e7及びg7を強力に制圧していることである。これらの枡は黒陣にあり黒キングに近い。しかし黒はこれらの地点に駒を置くことができない。自由に使える地点が少ないので黒が侵入者を撃退するのは難しい。
ここからの勝ち方は学習と娯楽の見出しの下に入る。
31.Qg3
狙いは 32.Bxg6 fxg6 33.Qxg6+ から即詰みに討ち取ってすぐに勝つことである。
31…Kh7
ポーンを守るにはこの手しかない。代わりに 31…g5 と突くのは 32.h4 で白に勝つようにお手伝いするようなものである。
32.h4
黒のgポーンが釘付けになっているので白は 33.h5 でさらに当たりを付け足す用意をした。
32…Qc8
この手はクイーンに危険地帯へ急いで駆けつけさせるためである。黒が 32…h5 で白ポーンの前進を止めようとすると白クイーンが 33.Qg5(34.Qxh5+ の狙い)33…Kg8 34.Qh6 と押し入り 35.Qg7# で仕留める。
33.h5
砲火をもろい個所に集中させた。
33…Qg8
33…Be8 はだめでポーンは守るがクイーンの通り道のじゃまになる。クイーンはある地点から別の地点にとび回るので白の攻撃に対して素早く防御することのできる唯一の駒である。
34.Rd4
白はあらゆる手段を利用する。このルークはh列またはg列に転回して戦いに参加する。
34…Be8
このビショップはgポーンの守りを助けて、クイーンが白の次の攻撃目標のhポーンを守れるようにした。
35.Rh4
作戦が明らかになった。36.hxg6+ fxg6 37.Rxh6+ Kxh6 38.Qh4# の3手詰みを狙っている。
35…Qf8
この一手の受けである。
36.Rg4
うまい駒捌きである。白の前の手は敵クイーンをgポーンからおびき出した。このポーンを守る駒が1個減ったので白は4個目の駒のルークで攻撃する。
36…Qg8
クイーンが守りに駆け戻った。
37.Qe3!
ルーク当たりになっていて白の真の目的である盤の他端のhポーンに対する攻撃のために手を稼いでいる。
37…Rd7
ルークは当たりを逃げたがキングの守りの助けに駆けつけることはできない。
38.Rh4
前の狙いの 39.hxg6+ fxg6 40.Qxh6# を復活(そして短縮)させた。
38…Qf8
またクイーンがhポーンの守りにとって返した。
39.g4!
歩兵を繰り出した。白はすべてを攻撃に投入している。今度の狙いは 40.g5 でその後 41.hxg6+ fxg6 42.Rxh6+ Kg8 43.Qh3 で簡単な勝ちになる。もし 40.g5 の後黒が 40…hxg5 と取ってくれば 41.hxg6+ Kg8 42.Rh8+ Kxh8 43.Qh3+ で詰みになる。
39…Kh8
gポーンを釘付けからはずし 40…g5 41.Qe4 Qg8 で白の突破を困難にさせる用意をした。
40.hxg6
キングを守るポーンの非常線を引き裂いた。
40…fxg6
これは止むを得ない。さもないと白の次の手の 41.g7+ がひど過ぎる。
41.Rxh6+
さらに護衛をせん滅した。
41…Rh7
41…Kg8 なら素通し列に 42.Qh3 と駒を重ねてそれまでとなる。
42.Rxh7+
42.g5 は 42…Rxh6+ 43.gxh6 でh列がふさがり白にとって使い物にならなくなるのでもちろんだめである。
42…Kxh7
白は1ポーン得にすぎないがその攻撃からは何の勢いも失われていない。
43.Qg5
白の狙いは 44.Qh5+(釘付けポーンの窮状につけ込んだ)44…Kg8 45.Bxg6 と侵入することで最後の障壁が取り除かれる。
43…Qf7
黒はクイーン交換を避けた。なぜなら 43…Qh6+ は 44.Qxh6+ Kxh6 45.f7 Bxf7 46.d7 となって白に新たなクイーンができるからである。
44.Qh5+
最後の作戦行動の始まりである。
44…Kg8
キングが追い払われgポーンが守り駒を一つ失った。
45.Bxg6
パスポーンが勝負を決める局面を作るためにビショップを切った。
45…Qxg6
45…Qb7+ で反撃を試みても無駄である。白は単に 46.Kh2 と応じる。このキングは露出しているように見えるが実際は全然危険でない。
46.Qxg6+
46…Bxg6 47.d7 でクイーンができるので白の勝ちである。
本局は全般に渡って明快な大局観指法と巧妙な攻撃とが見事に融合されていた。序盤は理にかなって簡明で、中盤は攻撃の技法がためになり、終盤は芸術的だった。